
【第1章】夜空に誕生した新市場「空の広告媒体」
― レッドクリフの事業概要を教えてください。
株式会社レッドクリフは2019年5月に設立された日本発のドローンショー企業です。国内最多となる6,500機以上のドローンを保有し、企画・制作・運営を一貫して手がけています[1]。花火大会などで主催者が運営費用の協賛金集めに苦心する中、レッドクリフは「空の広告媒体」としてスポンサー枠を設ける新しい収益モデルを導入し、主催者の負担を減らしつつ、地域の活性化(地方創生)や夜の観光需要(ナイトタイムエコノミー)にも貢献しています。世界に向けて日本文化を発信する「クールジャパン」の一翼も担っていると考えています。
レッドクリフのショーの大きな特徴は、花火搭載ドローン、AI制御、QRコード表示など、多彩な演出を組み合わせた体験型イベントであることです。また、2025年からは教育用プログラミングドローン「Hula-JP」やロボットを活用する教育コンテンツ「プログラミングLab」を展開して新たな学びの場を提供しています。
― ドローンショーを開催したいと考えるクライアントには、どのような方がいらっしゃいますか。
大きく分けると「自治体」と「企業」です。自治体では周年イベントや花火大会、お祭りなど地域の行事に、企業では周年イベントや新製品発表、ブランド認知の拡大を狙ったプロモーションに活用されています。共通するのは「お客様との繋がりを深めたい」というニーズです。ショーを体験した観客が感動してSNSで拡散することで、口コミ的に広がる効果があります。特に、花火大会で実施すると多くの観客が一斉に情報を共有するため、全国的なプロモーションに発展しています。

― 観客の皆さんに向けて体験型・参加型の企画にしていらっしゃるとのこと。企業とファンが繋がった事例をお聞かせください。
横浜と神戸で開催した「クリスマスドローンショー2024」(主催:日本コカ・コーラ)です。1,225機のドローンでクリスマストラックやサンタクロース、ツリーを夜空に描きました。まるでサンタが地上の自分を見ているような、あるいは自分も一緒にコカ・コーラで乾杯しているような体験を観客に届けることでブランドと顧客を強く結びつけました。
【第2章】かまいたちと創る、観客を巻き込む地域活性ショー
― レッドクリフでは、年間何件のドローンショーを企画・推進していらっしゃいますか。
年間約50件ですが、毎年倍近くのペースで増えています。企業による広告プロモーションや周年イベントなどは季節を問わず開催されています。繁忙期は、お祭りや花火大会が開催される夏、イルミネーションやクリスマス、カウントダウンのある冬です。案件ごとの準備期間は平均2ヶ月で、長いものでは半年前から動き出しています。
― 1回あたりのドローンショーはどれくらいの長さですか。
平均15〜20分で、ドローン1機の最長飛行時間とほぼ同じです。ただ、年末年始には40分のショーを実施した例もあります。ドローン2,000機を交代制で飛ばす仕組みを活用することで、観客には常に夜空にドローンが浮かんでいるように演出しました。理論上、この仕組みを応用すれば1〜2時間のショーも可能です。
― 2025年8月に開催された島根県の花火大会「松江水郷祭」では、花火を打ち上げる前に888機によるドローンショーが披露され、その一部は人気お笑い芸人のかまいたちさんがプロデュースしました。
かまいたちの山内さんが松江のご出身ということもあり、前年の水郷祭を観て「ドローンショーってすごい!」とYouTubeで語ってくださったことが反響を呼び、弊社から「来年はぜひ一緒にドローンショーを作りませんか?」とオファーしました。夜空に山内さんのホクロを再現したり、弟さんが働くコンビニの場所を示したりとユーモアたっぷりの内容で、SNSでも大きな話題になりました。
私たちはSNSなどをチェックしながらどんなモチーフが夜空に映え、観客の皆さんの感動を呼ぶかを想定しながら物語性の高い企画を作っています。今回はかまいたちさんが面白かったおかげでドローンショーは大成功に終わりましたが、芸人さんが地元のためにタイアップしたことが新しい観光コンテンツになったという結果が嬉しかったです。

― 大塚製薬の炭酸栄養ドリンク「オロナミンCドリンク」のドローンショーは「元気ハツラツ!大空大合唱」というテーマで開催されました。KANさんの大ヒット曲「愛は勝つ」を参加者全員で大合唱し、夜空に沢山の瓶がリズミカルに動いていました。
ご担当の方から「観客の皆さんを夜空に巻き込める企画を考えたい」とご相談を受けたんです。「愛は勝つ」に合わせて一小節ごとにモチーフが動き出すようにドローン数を計算し、オロナミンCをかたどった音符や歌詞を夜空に配置しました。皆さんと何度も調整を重ね、観客が同じ夜空を見上げながら大合唱できる体験を実現しました。
【第3章】複層的な法規制と天候リスクを乗り越える体制
― ドローンの性能やバリエーションも日に日に増しています。
従来の「ドローン ✕ LED」に加え、最近の機体は拡張性が高まっています。LEDのモジュールを交換できるだけでなく、レーザーを積んだりスモークを発生させたり、小型の物体を投下できる仕組みも備わりました。特に、スモーク機能は画期的で、夜空に浮かぶ煙が「スクリーン」となり、これまで建物にしか投影できなかったプロジェクションマッピングを空中で表現できるようになりました。従来のドット絵的な演出から映像作品のような立体感へと進化しつつあります。
― ドローンショーを開催するまでに、どのような許可や調整が必要ですか。
最も大きいのは、航空法に基づく飛行許可・承認です。人口集中地区の上空や夜間、催し場所の上空での飛行、危険物の輸送や物件投下など、飛行する空域や方法に応じて手続きが求められます。さらに、会場の条件によっては河川事務所や海上保安庁、警察、消防など関係機関との調整も発生します。ドローンショーには複数の法令や行政手続きが関係するため、レッドクリフでは開催に向けた運用体制を整えています[2]。

― ショーの当日が悪天候の場合、どうなってしまうのでしょうか。
花火大会と同じく雨や強風、落雷のリスクがある場合は安全を最優先して中止しています。予備日を設定できる場合は延期しますが、難しい場合はテストフィールド(実験場)でショーを再現し、映像を撮影して提供します。現地リハーサルで必ず映像を残して天候リスクを最小化しています。
― どのようなメンバーがドローンショーを手がけていらっしゃいますか。
レッドクリフでは、案件を企画するプロデューサーチーム、クライアントとの調整を行う営業チーム、3DCGでモチーフやプログラムを作るアニメーターチーム、そしてドローンの飛行や整備、申請を担当するオペレーターチーム、と大きく4つのチームに分かれています。制作会社や広告代理店出身の企画者、3DCGに強いアニメーター、ドローン業界経験者など、異業種の専門人材が活躍しているのが特徴です。
【第4章】創造力の源泉は、各国のショーと海外旅行
― この章では佐々木さんの素顔を伺います。ドローンショーの企画や演出のアイデアは何から生まれるのでしょうか。
シルク・ドゥ・ソレイユやラスベガスのショーなど、世界中のエンタメを積極的に観ています。そうすると「これは日本に持ち帰りたい」「この演出はドローンショーにも応用できる」と発想が広がるんです。また、クライアントの過去のCMや作品を調べて「こういう演出を求めているだろうな」「ドローンでこんな挑戦をしたら面白いはず」と企画を思い浮かべています。
― 日頃から意図的にインプットしていらっしゃるんですね。
はい。面白そうなイベントがあれば年に数回、海外へ飛びます。ドバイや中国、ラスベガス、ヨーロッパなど気になる場所には進んで足を運んでいます。
― リラックスしたい日はどのようにお過ごしですか。
仕事が完全には抜けきらないかもしれませんが、そんな頭でずっとやっているとパンパンになるので定期的に休むようにしています。やはり、サウナやポーカー、旅行をしている時が一番リフレッシュできますね。

― 佐々木さんは奥様にプロポーズする時、夜空にドローンでエンゲージリングを映し出したとのこと。素敵ですよね。
ありがとうございます。最初からチームのみんなに説明してサプライズ企画を立てました。妻は驚いていましたが、とても喜んでくれました。「社員の誕生日パーティーを祝うためにドローンショーをやる」と妻を誘ったのでバレませんでしたね。当日、前半は誕生日パーティー、後半はプロポーズという流れにしました。

【第5章】世界を見て確信。日本のコンテンツ力の強さ
― レッドクリフが中長期的に実現したいことは何でしょうか。
すでに着手しているのは、海外展開です。弊社では、海外でのショーを現地企業に委託せず、自ら拠点を置いて展開する体制を準備しています。世界各国でクリエイティブに挑戦できる環境を吟味しつつ、連携と自前展開の両輪で拡大を進めています。ある国からは「安全性やアニメーションの質」を高く評価され、新規プロジェクトをご依頼いただきました。その国にも同業他社が存在する中、レッドクリフに声がかかったことは大きな自信に繋がっています。

― 日本ではどれくらいの拠点を展開したいですか。
現在(2025年9月)、北海道や埼玉、群馬、静岡、大阪などにパートナー企業があります。今後もネットワークを広げ、地方案件については地元企業と連携し、コストを抑えながら実施していきます。各地の信頼できるパートナーとともに進めることでドローンショーの全国的な普及を目指します。
― 花火大会の合間にドローンショーを挟むことを、各地域ではどのように受け止められていますか。
「ドローンショーは次世代の花火だ」と言われることもありますが、私たちは花火大会を持続可能にするためにショーを実施しています。花火の伝統を守りながら予算や時間を削らず、花火大会の前後に新しいマネタイズの仕掛けを設けることで、協賛金や来場者が増えて地域経済の活性化に繋がります。さらに、大規模スポンサーを誘致できるほか、地元企業も「ロゴを夜空に出せるなら協賛しよう」と新規参入するようになりました。
― 花火職人の皆さんも、ドローンショーに反発しなかったのでしょうか。
当初は警戒したかもしれませんが、現在は弊社が日本各地で開催される花火大会で協働しているため「うちも一緒にやりたい」というムーブが広がりつつあります。レッドクリフが日本を代表する大曲や長岡の花火大会に関わるようになったことも歴史的な転換だと考えています。
― ドローンショーを通じて、どのような文化やエンタメを作っていきたいですか。
世界的に見ると、日本はドローンショーの導入が遅れていました。しかし、これからは私たちの強みである高品質なアニメーションや日本発のコンテンツ、IP(Intellectual Propertyの略。知的財産)を武器に世界で勝負できると確信しています。また、私たちの所有機体数が注目されていますが、ドローンショーの規模感が均一化していくとコンテンツ力やクリエイティブ力が競争軸になり、日本は後発でも十分に戦えます。世界各国のドローンショーを見て回りましたが、弊社のほうが質が高いと自負していますね。花火が日本を代表する伝統であるように、ドローンショーも次世代の文化・伝統として根付かせていきます。
― 最後に、クリエイティブなアイデアを生み出せないと悩む読者の皆さんにメッセージをお願いします。
考え込むよりも、まずは観に行って体験することをお勧めします。国内外のショーやイベントには、新しい発想の源泉が詰まっています。特に、海外には日本では見られない壮大なスケールの演出が数多くあるため、私はこれからも現地に行くでしょうね。ビジネスでも同じで、あらゆるピッチイベントに参加すれば、3〜5分の発表の中から数えきれないほどの着想を得られます。現場に足を運ぶことが、創造性を磨く一番の近道ではないでしょうか。
― 佐々木さん、お話をお聞かせいただきありがとうございました。
